書く力
前回は自転車に乗ることがなくなったことを書きましたが、もうひとつ、最近は手で文字を書くことがなくなりました。
弁護士の業務は朝から晩までパソコンを使って作業しており、手で文字を書くことは、メモを書くことや、手帳に予定を書くことくらいに限定されてきました。
弁護士になる前は、手で文字を書くことが当たり前であり、その量も非常に多いものでした。
手でたくさんの文字を書くことが要求されたのは、司法試験の答案です。
自分が受けた司法試験のスケジュールを見ますと、2時間で書く論文試験が7つと3時間で書く論文が1つありました。
この頃は、司法試験に合格するために、1年にボールペンの替え芯を数十本消費して、手で文字を書いていました。
論文試験はラスト10分でどれだけの量を書けるかが重要なときもあり、書く力が要求されました。
一方、弁護士になるまでは書く力が要求されていましたが、弁護士になると要求されるのはパソコン等機械の操作能力です。
弁護士は裁判所に対して主張書面を出しますが、その作成はすべてパソコンで行います。手書きで主張書面を作成することは基本的にありません。
司法試験についてはデジタル化することがすでに決まっています。
法務省が出している資料を見ますと、デジタル化の必要性として、手書き答案による受験者への過度な負担を無くす、判読困難な場合の採点担当者の無用な負担を無くすと書かれており、これらの解決のため、パソコンでの答案作成に移行するとのことです。
手書きの試験を受けた人間としては寂しい気持ちもありますが、弁護士になってから、2時間で手書きの主張書面を裁判所に提出するといったことはまずないので、デジタル化はやむを得ないと思います。
人生のうちであれだけ手で文字を書き、大量にボールペンの替え芯を消費することはもう二度とないでしょう。
時代によって廃れていく技術は多いですが、法律家になるために、もはや書く力は要求されないことになりました。


